教育研修の評価方法を設定する

「教育研修設計仕様書」が完成したら、次に「教育研修コースマップ」を作成しますが、その前に、あらかじめ今回設計する教育研修の評価方法を設定する必要があります。

なぜなら、評価方法によっては、教材の新規作成やアンケート内容の改訂、教育研修前後に必要な学習方法の設定などをしなければならず、それによって教育研修コースマップの描き方も変わってくるからです。

設定したゴールによっては、かなり難易度の高い測定方法が必要になってくる場合があります。日本能率協会マネジメントセンターは、カーク・パトリックの教育効果測定モデルをもとに、教育効果のレベルを4段階で捉えています。
それぞれのレベルで必要な評価方法は以下のとおりです。

 

レベル1

このレベルは、参加者が教育研修で得た知識やスキルに対し、その必要性や意義を理解し、意欲の促進がなされた状態です。
これが達成されたかどうかを測定するには、教育研修終了後に参加者アンケートを実施します。
アンケート内容は、教育研修プログラムの単元ごとに、その単元のねらいをそのままアンケートとして記載します。

たとえば、単元のねらいが「○○スキルを習得する」ということであれば、「○○スキルの意義を理解し職場で活用しようと思いますか」といった設問にすればよいのです。

他の測定として、教育研修の中単元ごとに気づいたことをワークシートにまとめてもらい、それを回収して内容を確認する方法もあります。

レベル1は、一番下のレベルではあっても、クリアするのは難しいものです。
教育研修の中で意欲が十分促進されたかどうかは、まさに社内インストラクターの力量が問われます。
とはいえ、教育研修でこのレベルに達する責任があるかというと、必ずしもそうとはいえません。
参加者は、何のためにこの教育研修に参加するのかを明確に把握していない場合があります。
教育研修当日に会場に来て、講義のときに初めて知ったということも十分考えられます。
その場合は、意欲もかなり低下してしまいます。

 

教育研修に参加する前から、今回の目的やねらいを十分に理解してもらうことが大切になってきます。
それには、参加のための事前案内はもちろんですが、参加者の上司が、教育研修の意義や目的・ねらいを十分理解し、参加者に伝えておく必要があります。そうすることによって、参加者の教育研修のマインドセットが十分にできます。
上司が「この忙しいのにどこにいくんだ」とか「休養だと思って参加してこい」などと言ってしまっては、マインドセットは高まりません。
上司を上手に巻き込むことが、教育効果を一段レベルの高いところに引き上げる手段にほかなりません。
また、教育研修終了後も上司を巻き込みながら、持続的成長を促すような働きかけをしてもらうべきでしょう。

 

 

レベル2

このレベルは、参加者が目的の知識やスキルが身についた状態です。
これが達成されたかどうかを測定するには、知識であれば、理解度確認テストを教育研修の最後か数カ月後に実施します。
スキルについては、最終的に実技テストを行うという方法があります。

しかし、時間の関係で全員にできない場合もあります。
また、そのときはできていても、職場に戻ってからも同じようにできるかというと、それはまた別の話です。
特に、ビジネスマナーなどは、どんなに厳しくトレーニングしても、職場に戻るとできていないことが多いようです。
ただ、そうなっていても、やらせればできる場合がほとんどです。

要するに、レベル1で測定している「必要性や意義」を十分理解していないことが原因です。
まず、そこをクリアすることが前提にあるのです。

やはり、ここにおいても職場の上司や先輩が厳しい目で観察し、指導してあげることが大切です。
もっとも、職場の上司や先輩ができていないことは、参加者もできないのです。
社内トレーナーとして頭の痛いところですが、しっかりと職場を巻き込む努力がレベル1と同様必要となります。

 

レベル3

このレベルは、参加者が教育研修の成果を実際に職場で活用している状態です。
これが達成されたかどうかを測定するには、教育研修終了後に職場で360度での測定をする方法があります。
参加者本人から見て、上司・部下・同僚から評価してもらう方法です。
これを行うには、その評価基準の設計や収集・集計方法、職場の負担感などをどう理解してもらうかが鍵となります。

また、参加者や関係者から簡単なアンケート調査を行うことも有効です。
しかし、これも360度の測定方法と同様に、職場の負担感を理解、納得してもらう必要があります。
また、社内インストラクターが自身で職場に訪問して聞き取り調査をすることも、1つの方法としてあります。

 

レベル4

このレベルは、学習内容を活用してビジネス成果を向上させた状態です。
これが達成されたかどうかを測定するには、教育研修終了後に実践を通じて開発した知的財産や業績成果の価値を明確にすることが必要です。

また、財務的な換算を行って、教育研修がどのような貢献をしたかを測定しなければなりません。
このレベルの測定は非常に難しいものと考えられます。

なぜならば、たとえば営業スキルを上げるための教育研修に参加して、その後の営業活動をつうじて大きな営業成果を上げたとしても、獲得した営業スキルがダイレクトに営業成果に影響を与えたかどうか判断ができません。
経済環境の影響もあったのかもしれないし、たまたま良いお客さまに出会ったのかもしれません。

このレベルを測定するためには、ある程度参加者から自己申告をしてもらう必要があるかもしれませんが、それでも正確な測定ができるわけではありません。
ただ、社内インストラクターとして教育予算を確保するための、経営トップへの説得材料として有効な測定だと考えられるため、難易度の高い測定ではありますが、チャレンジしてみてはいかがでしょうか。

 

以上、評価方法の設定について述べてきましたが、既に述べたように教育研修は特殊な場合を除いて、効果がすぐに出てくるものではなく、少し先を見据えて行うものです。

なぜなら、新たに得た知識やスキルはたいていすぐに活用せず、参加者本人の中でトライアンドエラーを繰り返し、ある程度熟成させて、現場で活用できると判断したうえで活用しようと考えるからです。

得た知識やスキル、特に知識は自分の中でしっかり理解できていなければ、自分の言葉として語ったり活用したりすることができず、単なる受け売りに留まってしまいます。

このようなことから、測定方法の設定にあたっては、教育効果がすぐに表れるとは限らないことを念頭に置いておく必要があります。

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